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「はぁ……相変わらず凄い速度と精密度ね……」
サエが尊敬の眼差しで感想を述べる。さっきまでの慌てようなど微塵も感じさせない。
このサエと呼ばれる少女はカヤの大親友で、いつも活発的で、走り回っているイメージが強い。
「そんなことより、サエは何してたんだ?」
「襲われてた」
「は?」
「だから、襲われてたの!!」
「誰に?」
「うーん、なんて言ったらいいんだろ……。体が鱗みたいなので覆われていて、湿った土みたいな色で……」
「もしかして、体長は人より少し低くて、口は耳まで裂けてたりする?」
「そうそう! なんだ、知ってるんじゃん」
「知ってるもなにも……」
ガイヤは苦笑しながら周囲を見渡した。三人を囲うように、今説明された化物が紫色の舌で、自分の黒くて長い爪を舐めていた。
「嘘……」
「囲まれてるね」
「そうみたいだ」
カヤは普通の反応をしていた。つまり、怯えていた。
それにくらべて、サエは普段と変わりない表情をしているが、全く平気というわけではなさそうで、かなり慌てていた。
「どうしよう」
「やるしかないだろ。いけるか?」
「うん。無理」
「笑顔でいうな。また俺一人でやるのか」
ため息をつき、ガイヤは周囲の状況を確認した。
化物の数は全部で八、前後左右に二匹ずつセットでいた。
「数はいるが力はたいしたことない。弱い魔法の連発で……。いや、一気にいくべきか……」
「そんなの決まってるでしょ。一気よ一気」
「簡単にいうな」
「いいからはやくしなさいよ」
「はぁ……」
サエと会ってからため息しかしてないな、と思いながら顔を引き締めた。
化物達がにじり寄る中、ゆっくりと詠唱をはじめた。
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