2章∮現実∮

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「雷鳴轟くところに雷神ありて」  呪文を唱えながらゆっくりと右手を空に向けて掲げた。 「遥か彼方の遠い世界より」  掲げた手の先に広がる青空はみるみる内に黒い雲に覆われ始めた。 「我に力を分け与えたまえ」  化物達が異変に気付き、一斉に飛び掛かった時には、既に呪文は終わっていた。  空が一瞬光ると、地面がえぐれ、強い衝撃が地震を起こした。  周囲には化物の影すら見受けられない。落雷だと気付いたのはしばらくしてからだ。 「ガイ君すごい……」 「さすがガイヤね」 「お前ら……」 「ガイ君……」 「だからガイ君って呼ぶんじゃ――」 「ユキちゃんとリク君、大丈夫かな?」  ガイヤは息を呑んだ。  村の入口に二人を置いてきたのは自分だ。ここが襲われて、向こうが安全な保証はない。  気付いた時には足が勝手に動き出していた。 「ちょっとガイヤ。急にどうしたの!?」 「今説明してる時間はないと思うよ?」 「そだね。このままじゃ置いてかれちゃう」  二人は、なにふりかまわず走り続けるガイヤの背中を追った。
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