2章∮現実∮

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 今までの生涯で、ここまで必死に走ったことがあっただろうか、倒れてくる柱を薙ぎ払い。道に転がる屋根瓦を魔法で吹き飛ばして、走り続けた。 「ユキ!! リク!!」  息は完全にあがっている。肺は酸素を要求しているようだが、ガイヤの呼吸は止まっていた。  目線の先には、腹部を鋭利な刀で引き裂かれたように広がり、辺り一面に真っ赤な液体を撒き散らしている物体が二つ。重なり合うように転がっていた。  そこにはさっきと同じ化物が一匹、真っ赤に染まった自分の爪を舐めていた。  その光景を見た瞬間。ガイヤは殺すこと以外、考えることができなくなった。全身で殺気を放ち、大声で詠唱をしながら走り出した。 「天輝き、地を照らす時!!」  化物も新たな獲物を切り裂くべく、こちらに向かって走り出す。 「世に巣食う悪を滅ぼす!!」  化物が爪を振り上げ、ガイヤがすかさず懐に潜り込む。 「我が前に裁きの輝きを!!」  爪が振り下ろされる瞬間。化物の腹部から全身を簡単に包み込む火柱が放たれた。  遅れて二人が到着するころには、化物は灰すら残らず、完全に焼失していた。  呼吸の荒いガイヤを見て、心配そうにカヤは尋ねた。 「ガイ君大丈夫?」 「カヤ……」 「この馬鹿!! 一人で突っ走るんじゃないわよ!!」 「サエ……。すまん」 「謝るぐらいならもう二度とこんなことするんじゃないわよ」 「あぁ……」 「何があったの?」 「守って……やれなかった……」  重く暗い空気が流れた。沈黙が耳に痛かったが、誰も言葉がでなかった。  長い沈黙の後、不意に背後で、何かが倒れるような音がした。また柱が倒れたのか、とガイヤが振り向くと目を見開いた。
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