2章∮現実∮

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「せん……せい? 先生!?」  ガイヤは駆け寄った。先生は片膝をつき、右手で左肩から流れ出る血をおさえていた。 「ガイヤさん、情況はどうなっていますか?」 「そんなことより怪我が……」 「私なら大丈夫です。情況報告を……」  ガイヤは怒られるのを覚悟で正直に話した。  ユキとリクだけを置いて家に戻ったこと、襲われた化物を撃退したこと、任された二人の最期を報告した。 「わかりました」  一瞬、顔が悲しみにつつまれたが、すぐに厳しい顔付きになり、叱責をうけると思ってガイヤは身構えた。 「貴方達は今すぐここを離れ、風星に行きなさい」 「フォンスター?」  すっかり身構えたガイヤはア然として聞き返していまった。 「風星は村の東にある森を抜けるとある街です。行ったことぐらいあるでしょう?」 「はい。何度か行ったことはありますが……」 「そこにスティールという私の知人がいます。その人の元に行き、この村のことを報告しなさい」 「え?」 「いいですね? これを見せればすぐに話を聞いてもらえると思います」 そう言うと先生は緑色の指輪を外してガイヤに渡した。  確かに街に行けば怪我の治療を出来る人がいるが、見るかぎり人を連れてくる時間、無事でいられる保証はなかった。 「街に行ってスティールさんに情況報告をするだけでいいです」 「わかりました」 「そうだ。これを貴方にあげましょう。今日の訓練で好成績をとったご褒美です」  血まみれになって転がっている鞄を引き寄せ、中からゆっくりと小さな本を出して差し出してきた。  ガイヤはそれを受け取ると願うように訴えた。 「先生は、一緒に行かないんですか?」 「私は他にやることがあります。きにせず行きなさい」 「え? それって……先生を見捨てろってことですか?」 「言い方が悪いですよ?」  ガイヤは息を呑んだ。笑顔で語る先生は不安を感じさせない、優しく穏やかな物言いだった。 「私なら大丈夫です。はやく行きなさい」 「でも!!」 「はやく」  ガイヤは押し黙り、やがてゆっくりと頷いた。先生は笑顔になると、ゆっくりと立ち上がった。 「カヤさんとサエさんを頼みますよ?」 「はい」  ガイヤが二人に「行こう」とだけいうと黙ってついてきてくれた。笑顔で見送られる中、三人は風星を目指した。  先生は三人の姿が見えなくなると地面に倒れて動かなくなった。
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