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風が駆け抜ける度、木々は葉を揺らし、小鳥達はそれに合わせて歌っていた。
生徒達が雑談や風景を見て楽しんでいる中、一人だけ例外がいた。
ガイヤである。
狭い個室で、みっちりと説教を受けた彼は、学校を出発してから、ずっと疲れた顔で俯いていた。
「では、今から魔法の実技訓練を開始したいと思います。順番に昨日の授業で教えた魔法をあの岩に向けて放ってもらいます。一番手は最年長を代表して、ガイヤさんにお願いします」
「はい……」
小さく返事をして移動するその後ろ姿を、誰もが気の毒そうに見送った。
ガイヤは所定の場所に立つと、岩を確認しながら真剣な眼差しになった。高さは約三メートル、距離は五十メートルぐらい。魔法を放つ為、精神を集中させゆっくりと詠唱を始めた。
「大地を照らす輝きよ」
ゆっくり標的の岩に手をかまえる。
「時の流れと共に焔へと姿を変え」
ガイヤの周囲に空気の渦が巻き起こりはじめ、クラスメイトは固唾を飲んで見守った。
「我が前に示せ」
呪文の完成と同時に槍状の炎が出現し、束になったと思うと放たれた。
その炎は一直線に、標的へ見事命中したかと思うと岩全体にひびが入り、今にも砕けそうになった。クラスメイト達からは「おぉー」というどよめきがわいた。
「よくできました。冷静に狙いをつけられていて、威力も完璧です。とてもすばらしいです」
その後も、一人ずつ実技訓練をするが、命中する人なく終え、先生の指示で自由時間を過ごすことになった。
魔法の練習をする者や、友達と雑談を楽む者、それぞれが思い思いの時間を過ごしていた。
ガイヤは近くにある木陰で寝転びながら、そよ風に当たっていた。程よい感じの眠気に襲われてきた時、朝に聞いた足音と共にカヤがやってきた。
「ガイ君も一緒に遊ぼうよ」
「ガイ君って呼ぶんじゃねぇよ。俺はここで一休みすんの。あっちにいってろ……」
「もう……」
自分の言いたいことだけ言うと、ガイヤは静かに寝息をたて始めた。
カヤは頬を膨らませながら「ガイ君の意地悪」とだけ言うと、離れた所にある友達の輪に入っていった。
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