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太陽が頂点から傾きはじめ、辺りが過ごしやすい環境になってきた頃、ガイヤは自然に目が覚めた。上体を起こし、大きく伸びをしていると、離れた所から先生の声が聞こえてきた。
「皆さん集まりなさい。村にもどりますよ」
号令は自由時間を過ごしていた生徒達全員の耳にとどいた。
先生は集まった生徒の顔を確認し終えると、村に向けて歩き出した。
平原を出発し、しばらくするとカヤが友達の集団から抜け出してガイヤに近づいて来た。
「ガイ君ガイ君。手、かして?」
「だからガイ君はやめろ」
「いいからいいから」
「はぁ……。これでいいか?」
カヤは満足そうに笑うと、ガイヤの左手首にブレスレットを取り付けた。よく観察すると、銀色の鎖に宝石が埋め込まれていて、時折、太陽の光に反射して蒼く輝いていた。
「綺麗だな。これどうしたんだ?」
「私が作ったんだよ」
「カヤの手作り? なんでまた……」
「だって、今日はガイヤの誕生日でしょ? すっごい頑張ったんだから」
「バカだなぁ。わざわざプレゼントなんて……。呪いでもあるんじゃないか?」
「ガイヤのバカ!!」
ちょっとした照れ隠しのつもりで言った冗談は、気まずい雰囲気をつくってしまった。
そっぽを向いて友達の集団に戻ろうとしていたその背中に、ガイヤは照れながら本心を伝えた。
「カヤ……。ありがとな」
その言葉が届いたかはわからなかったが、振り向くことなく集団に戻ってしまったカヤの顔は、心なしか赤かった。
真実を知るのは、横をすりぬける風だけなのかもしれない……。
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