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村の姿がうっすらと見え始めた頃。ガイヤは微かな地面の揺れを感じた。
周りを見渡して、誰も気付いていないようだったので、気のせいだと思って何も言わなかったが、歩く度にその揺れは大きくなり、周囲にも気付く者が出始めた。
「ねぇ、地面揺れてない?」
「そうか? 気のせいだろ」
しばらくすると、地震とは違う揺れが断続的に続き始め、生徒達は歩みを止めると口々に話をしていた。
「地震?」
「それにしては長すぎる」
「じゃあ何なの?」
「わからない……」
不意に、今までとは比べ物にならないほどの揺れが、間を空けながら二度起こった。
誰もが首を傾げている中、ガイヤは村の方向を見て絶句した。
「村から……。村から煙が出てる」
その言葉で全員の視線が一点に集中した。
村から黒煙が高く舞い上がり、さっきまで揺れていたはずの地面は、すっかり静寂を取り戻していた。
誰もが不安な表情を浮かべ、沈黙していた。
「とにかく今は村に帰りましょう。何かが起きてることに間違いはありません」
この時、ガイヤはなんとなく感じとっていた。今急いだところで、手遅れだということに……。
それでも、僅かな希望を信じて周りの生徒と共に歩み出した。
はじめは小走り気味に、そしてしだいに速度を上げ、最後は全力疾走に近い状態で村に向かった。
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