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「ただいま…翼…」
にっこりと微笑む天使。この微笑みは幻覚なんかじゃない。
俺はいまだに信じられなく。ゆっくりと和奏に近付きギュッと抱き締めた。
「馬鹿野郎!会いたかったじゃねーか!」
この柔らかさ…何度味わった事だろうか…今は凄く懐かしく感じる。
「翼…痛いよ…」
「痛いか…ならもっと強く抱き締めてやる!」
もう離したくない。今俺の腕の中に和奏がいる。信じられないが…和奏は確かにここにいた。
奇跡なんて信じた事無かったが…今俺は奇跡を信じよう。
「おー!おー!お熱いこったな!」
「本当に良かったっす!」
しばらく俺は和奏との抱擁を味わいゆっくり離れた。
「もう…人前だよ?」
「どうだっていいさ!つかお前…何でここにいるんだ?」
冷静に考えて見れば和奏は成金に連れてかれた筈だ。でも何故今になって秋北の制服を着てここにいるんだ?
「それは…私が説明しましょう。」
疑問に思ってると横からスーツ姿をしたチョボヒゲ親父と後ろに強そうな黒服のお兄さんが二人立っていた。
俺は反射的に和奏を抱き締めた。また…和奏が連れていかれるんじゃないかって心配で……
「誰だよおっさん」
俺は和奏を庇うように後ろに遠ざけおっさんを睨み付けた。
おっさんは一礼するとゆっくり俺に近付いてきた。
「紹介が遅れました。私、松原グループの社長、松原修造と申します。この度は私の馬鹿息子がご迷惑をおかけして誠に申し訳ありません」
松原修造?松原グループの社長?馬鹿息子?って事は…成金野郎の父親か!?
ご丁寧に挨拶をした修造とか言うおっさん…何故か悪い人では無いと思う。
「はぁ…あの、和奏をまた…連れて行くんですか…」
ヤバい声が震える。もし連れてくなんて言ったら俺は和奏を連れて逃げよう。
「まさか…この度は修一が起こした言動であなた方にご迷惑をかけた事を謝罪しに来たのです。
私が海外出張で本家を留守にしてる間にあの馬鹿が小さな村にホテルを建てるって耳にしたもんで追求してみたら桜井翼様の婚約者朝倉和奏様を権力で奪い取ったと聞きましたので…私は朝倉和奏様を桜井翼様にお返しに来ただけです。」
おっさんははっきりと言った。和奏を返してくれると……もう…和奏はいなくならないのか?
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