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急かす足をさらに急がせ神社を後にしようと階段を降りてると嫌にでも足が止まった。
嫌な汗が止まらなくなり、目の前には花柄の真っ白な着物を着たサラッとした腰あたりまである黒髪の女性が俯きながら立っていた。
一目見ただけでそれが人じゃ無いと直感出来た。ビビりながらも着物の女性から視線を少し外すと女性はいなくなっていた。
見間違いだったのだろうか?鳥肌が凄く寒気がした。
「なんだよ…疲れてんのかな?」
まあ、和奏に告白やら何やらで意識しまくりだから疲れて多分変な物が見えたんだな!的な事で納得した俺は再度階段を降りようとした時…
『少しの間お身体をお借りします…』
「えっ?」
頭の中で可愛らしい声が聞こえた。意味も分からず足を止めるといきなり体が重くなり意識を失った。
「兄ちゃん!大丈夫か?」
「んっ!」
体中が軋むように痛い中おっさんの声で目を覚まし目を開けると俺の顔を覗き込むおっさんの姿があった。
「あっ…俺は一体」
「あんた気をつけなきゃ駄目だよ~!」
「あっ!すんません」
「あんた、朝倉さん家に居候してる元村長さんのお孫さんやろ?和奏ちゃんに告白するんで緊張してるからって足場には気をつけなきゃ!」
ヤケにナマった喋り方のおっさんは俺を起き上がらせると立ち上がった
つか何で和奏に告白する事知ってんだろ?
「あの、すんませんでした!今度から気をつけます!」
「おう!無事でよかったのぉ!」
そう言っておっさんは俺の肩を叩き「頑張れよ」と言ってその場から退散した。
俺は少しボーっとすると立ち上がり体の土を払った。
「うわっ…肩重っ!体ダルっ!風邪でも引いたかな?」
さっきの女性の事はすっかり忘れ異常な程の体のだるさにこれ以上動ける筈も無く、力無く最後の力を振り絞りながら家路へと帰って行った。
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