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12月の寒い朝のことだった。
尚人の下駄箱の中に1枚のメモが入っていた。
『放課後、裏庭に来てください』
いかにも女の子、といった感じのかわいらしいメモ用紙に丸っこい文字。
何故だか俺は尚人に何も言えなかった。
無言のまま教室へ向かう。
「尚「お、またかよ尚人!」
沈黙に耐えられなくなり話し掛けようと口を開くとタイミングがいいのか悪いのか俺の言葉を遮るように後ろから智也が現れた。
メモを覗き込んで「相変わらずだなぁ。」と笑っている。
「ね、またって…?」
「ほらこいつ見た目いーじゃん?だからかなぁ…モテるんだよね、昔から。」
智也は相変わらず笑いながら言った。
「だからこいつ女は取っ替え引っ替え、可哀相な女の子~。」
「藤本に余計なこと教えんなよ。」
尚人はムッとして智也を小突く。
俺はそれを見て笑いながらも何だか言葉には表せないような不思議な気分だった。
そのあと、昼休みまで俺は尚人と話せなかった。
…これも何でか分からなかった。
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