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 橋を渡りきると遊歩道がある。  私は、そこをしばらく歩いて道が途切れた先の積雪へ足を踏み入れた。  生まれたばかりの雪を長靴できゅっきゅっと鳴らしかためながら歩く。そして、道を外れて緑の中を分け入り、山へ踏み込んだ。  膝下まで埋まる雪を蹴り上げながら進むと、杉の巨木の群れが姿をあらわした。根元にはそれに囲まれた窪地があり、私は傘をすぼめて先をそこへ突き刺した。そして、池ではないとわかると、窪地へ滑るようにして下りた。  髪にうっすらと雪の重みを感じる。私は、天を見上げた。  杉の間から夕闇が雪でかすんだ鼠色の空がある。その隙間から雪がひらひらと落ちてきた。  私はその場に寝転がった。  酒を浴びるほど飲み、睡眠導入剤を口に入れる。それだけで簡単に死ねるだろう。ここで死のう。これを最期の景色にしよう。そう決意を固めた――。 「あの! なにしているんですか?」  突然、女の声がした。私は慌てて身を起こし、その方を向いた。  同じ旅館の傘の下から心配そうに眉をひそめた女の顔がのぞいた。  「いや……その」  私が言葉を考えていると、女は口をすぼめた。 「そんなところで寝てたら、死んじゃいますよ?」
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