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 夜の暗さはますます濃くなっていった。そして、雪はさらに降り積もっていく。 「わあ、きれい」  千鶴は窓を向いて、感嘆の声をもらした。私の迷いに気づかないようすだった。  私は煙草を一本抜き出し、丁寧に火をつけてゆらりと煙を吐き出した。 「ねえ! 松本さん見て!」  千鶴はまぶしいくらいの笑顔を向けた。 「え? 何か見えるの?」  吸いはじめた煙草を消してそばに近寄った。彼女が指差す先には、こんな寒い中、河原露天風呂に入る男達がいる。 「寒くないのかなあ」  千鶴は笑った。 「ねえ、松本さん。雪がきれい」  彼女が夜空を見上げる。暗闇の中を雪がちらちらと風に吹かれていた。  右に目をやると、窓に映る千鶴の顔には憂色が漂っていた。 「ほら、ねえ松本さん」  私に向けられた笑顔は無理をしているように見えた。  それ以上しゃべらせまいと、私は唇でその口をふさいだ。  千鶴は突然の出来事に目をひんむき、唇に力をこめた。だが、私の強引な接吻を受け入れ、舌を絡ませた。
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