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 私は、家で唯一の男であったために勤めていた会社を辞めて、自分でつくったわけでもない借金の返済に奔走した。  最初の頃は、義母や陽子も気遣いを見せていた。ねぎらいの言葉もかけていたが、五年も経つと近い人間関係ほど脆いもので、すぐに刃こぼれした。  私は慣れない仕事を一人でこなし、失業する従業員から散々文句を投げられた。そして、家族の盾となった。だが、義母と陽子は何かと理由をつけて、会社の物には指一本も触れなかった。その指は、その後の産物である金の枚数を数えるために使った。  次第に私はアイロンがけや、朝食の支度など、家での仕事も増えていった。  先の見えない闇の中で、自らを励まし何とか差し込む光を頼りに進んだ。だが、それはますます遠くなるばかりだった。もう、歩くことはできない。ここから逃げ出せば、きっと大きな幸せがある。そう信じて、私は家を出た。  その夜も、雪が降っていた。  汗が冷えのぼせた体からじわりと衣服にしみていく嫌な感じがして、目が覚めた。あの時と同じようだった。  瞼を開けると、もうすぐ駅に着くころだった。もう、煩わしいことを考えずにすむ。ここが、最期の地となるかもしれない。目星はつけてきた。
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