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 私は覚悟を決めて、ホームに足をつけた。そして、喉の奥が痛くなるくらいに澄んだ空気を吸い込んだ。  駅の改札口を抜けると、連絡通路には特産品や干物を並べた露店があり、これから帰路に就く旅行客らしい人もちらほらいた。  一人旅にしては異常に軽い旅行鞄を左手に持ち、指先を温めるために、右手の弱々しい拳を口元へ宛がって、駅のスロープを下りた。吐く息が指の間からすり抜ける。生ある煙はすぐに消えてなくなった。  日差しは薄い雲に覆われて、普段見られない太陽の輪郭がぼんやりとした線を描いて光っている。昨夜雪が降ったのか、人や車の往来がない所には、真新しい雪が残っていた。その表面は凍っているようで、歩くと滑りそうだった。  私はこんな雪国へ来たというのに、家の辺りが暖かかったために薄着だった。膝が色褪せたジーンズに灰色の伸びた長袖シャツを合わせ、その上に黒のダウンジャケットをはおった。そして、泥臭い運動靴を選んだ。服装は何でもよかった。  雪が溶けたアスファルトの歩道は、靴底を冷やした。足の指がかじかむ。
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