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 辺りには、もう着いた頃の薄日もなく、昼の光は風にあおられて舞う雪のせいで地上へたどりつくことができない。  私は、ジーンズの後ろポケットから煙草とジッポライターを取り出して、乾いた唇に一本くわえた。そして、軽い音をさせて火をつけると、深い息と共に煙を吐き出した。じんわりとした苦味が喉を通り過ぎる。それは、心までも蝕むような悲哀な気持ちにさせた。  しわくちゃの手で疲れた目を拭う。ここで休んでいる暇はない。目的は――そうだ、死ぬんだ。  急いで煙草を揉み消すと、ダウンジャケット掴んで部屋を出た。
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