あるクリスマスの短編

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「ねぇ!サンタさんまだ?」 「もうすぐ来るからねぇ」 そう言って、お母さんは笑った。 今日は12月24日、サンタさんが来るんだ! 僕はそわそわしながらサンタさんを待った。 「お父さんは?」 僕がお父さんがいないことを尋ねるとお母さんは少し慌てた。 「えっ、う、うーん……もう寝ちゃったのかなぁ」 「なんだぁ……お父さんはサンタさんに会いたくないんだぁ」 「き、きっと疲れちゃったのよ……」 その時、部屋のドアが開いた。真っ赤な服を着て、白いヒゲで顔が隠れたサンタさんが入ってきた。 「メリークリスマス!優太君のためにプレゼントを持って来たよ!」 目の前のサンタさんに僕は興奮した。 そのサンタさんは僕に野球の金属バットを渡してくれた。 「わぁ!ありがとう!」 「優太、これからこのサンタさんがお父さんになるのよ」 お母さんの突然の言葉の意味がよくわからなかった。サンタさんがヒゲを外す。 僕のクラスの担任の先生だった。 「よろしくね。優太くん」 「……お父さんは?」 「……もう寝ちゃったのよ」 お母さんが笑顔で言った。 僕は戸惑って視線をもらったバットに落とす。先の部分に血の跡がついていた。僕はふたりを見上げる。   ふたりは笑っていた。
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