プロローグ

3/3
前へ
/19ページ
次へ
「今日のヤツはしつこいなぁ。まだ追って来るよ…」  彼…『日置 神人』は、視えていた。影に潜み、ヒタヒタと付き纏い、追い続ける妖の姿が。 「なんで俺が、こんな目に会わなきゃなんね~んだよっ?!」  神人を追いかける妖。  生りは幼子。表情は見えないが、まるで蛙のような四肢がヌラリと伸びている。  もう陽が暮れる。  助けを呼ぶにも呼べない。例え人がいようにも、妖の姿は他に見えない。  ただ……妖は光には弱い。目前の大通りを抜ければ、人工の光に満ちた世界。  そこまで行けば何とかなる。しかし、そこまでが長い。化かされているのか、やけに遠く、遠くに感じる。 (あと少し…あと少し…) 「…うあっ!!!」  その時、ついに妖のぬめった腕が神人の足首を捕えた。思いきりつんのめる神人の身体。  絡みつく、冷たくぬめった腕。 ―捕マエタ、捕マエタ。― 脳味噌に重く直接響いてくる妖の声。 (ヤバい…今回は、ヤバいかも知れない…)
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加