5人が本棚に入れています
本棚に追加
「今日のヤツはしつこいなぁ。まだ追って来るよ…」
彼…『日置 神人』は、視えていた。影に潜み、ヒタヒタと付き纏い、追い続ける妖の姿が。
「なんで俺が、こんな目に会わなきゃなんね~んだよっ?!」
神人を追いかける妖。
生りは幼子。表情は見えないが、まるで蛙のような四肢がヌラリと伸びている。
もう陽が暮れる。
助けを呼ぶにも呼べない。例え人がいようにも、妖の姿は他に見えない。
ただ……妖は光には弱い。目前の大通りを抜ければ、人工の光に満ちた世界。
そこまで行けば何とかなる。しかし、そこまでが長い。化かされているのか、やけに遠く、遠くに感じる。
(あと少し…あと少し…)
「…うあっ!!!」
その時、ついに妖のぬめった腕が神人の足首を捕えた。思いきりつんのめる神人の身体。
絡みつく、冷たくぬめった腕。
―捕マエタ、捕マエタ。―
脳味噌に重く直接響いてくる妖の声。
(ヤバい…今回は、ヤバいかも知れない…)
最初のコメントを投稿しよう!