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「白金様。無礼を許して下さいね。」
父親は冷蔵庫から持って来た油揚げを供え、手を合わせる。神人も真似をして、隣で手を合わせた。
お稲荷様の扉をゆっくりと開けると、そこには無くなったはずのクレヨン。
そして、いつか無くなった写真立てまでもそこにあった。七五三さんの写真で、母親が凄く困っていた。
「な。分かっただろ?必要な分だけ返してもらって、後は置いておきな。」
父親の腕から降り、神人は手を伸ばす。写真立てにも手を伸ばしたとき、父親の腕が静止した。
「それは置いておきな。きっと、お稲荷さんが神人を護ってくれるから。」
緑と赤と黒。買い足してもらっていない三色だけ手に取り、神人はまた手を合わせた。
「神人。このことは、誰にも言っちゃダメだよ。」
父親が頭を撫でながら、笑った。
狐の鳴き声が、遠くに聞こえた。
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