過ぎ去る日常

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香代 「そりゃもっと楽な道を選ぶこともできる。でも、たった一度しかない人生や。自分のやりたいことに必死になってもええやろ?」 雅司 「……」 きっと……何年先になるかわからないけど、香代なら……こんなに立派な志を持った香代なら……いつかは絶対に成功する。 有名になれる。根拠はないけどそう思える。 雅司 「……香代は……スゴいね……大丈夫。そこまで考えをはっきりさせてるなら、きっと有名になれるよ」 香代 「ホ、ホンマ!?本気で思うてる?」 雅司 「うん。近いうちにテレビに映るようになるかもしれないね」 香代 「そ、そっか……よし!なんやヤル気出てきたで!今のうちに漫才とかたくさん見とかな!」  奮起する香代。 手に持つ進路希望調査のプリントには丁寧な文字で、しかしでかでかと希望が見て取れるような字で『芸人』と書かれていた。 舞い上がってこれからの生活に目標を持てた香代を、僕は複雑な心境でしか見れなかった。 香代も将来を見据えた。 なら、僕は一体なにをする?好きなこと。興味があること。 ……何もない。 焦るべき事態だと思うけど、解決策が思い浮かばない。 誰が決めてくれるわけでもない。僕は愛理ちゃんを除いたら、こんなに意味のない人間。 どうするべきか……。  
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