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別離
まだ謳歌爛漫の桜の花が咲き誇る、四月三日。
北山周蔵は西陽を浴びるなか、東武『流山駅』に降り立った。
ずいぶん寂しい駅だなと、独り呟いた。
東武流山線の流山駅前には、バス亭もなく、ただタクシーが二台止まっているだけで、地面は舗装されていず。所々水溜まりができていた。
『寂しい所だな一雄はなんでこんな処に、こしたんだ…』
駅から降りた乗客がわず四人足早にとうり過ぎていった。
周蔵がジャケットのポケットに手を入れて、ラークの赤箱を取り出したものの。
『なんだよ。からじゃないか‼』
駅前なのに、コンビニ一つない。
暇そうに、タクシーから降りて、タバコを吸っている運転手に声をかけた。
『すいません。このへんで、タバコ売ってませんか?』
なんだ客じゃないのかと口をへの字にした。『自動販売機がそこにあるよ‼』
そんなのみればわかるよ。こちとら、パスモを持ってないんだよ。
いきなり、携帯が鳴った。
『周蔵さん?悦子です。わざわざすいません。いまどちら?』
『流山駅前です』
『すぐ迎えにいきます…』
幼馴染みの一雄が突然姿を消して、5日がたっていた。
『周蔵さん‼悦子です。すっかり大きくなりましたね‼』
悦子は息子の一雄が、失踪した。2日後北海道から出てきたのだ。
小学3年生のときに一雄と別れて以来、15年ぶりのことだった。46歳になった悦子はガラガラに痩せていたのに、見違えるほどグラマーな女性に変身していた。
独身でまだ24歳の周蔵にははち切れんばかりのバストやミニスカートから覗いている妖艶な太ももは、刺激が強過ぎた。
『流山の警察署にいっても、事件扱いしてくれないのよ?』
一雄とは、同じ大学で、学部こそ違い四年キャンバスを共にした。ポン友であった。
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