熟女の味

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悦子は、ユックリ…ソファーから立ちあがると。静かに周蔵の隣に腰を降ろすなら、自分の豊満な胸元にギュッと頭を抱きしめた。 それは、忘れかけていた母親のように、温かな抱擁であった。 周蔵は、自然に悦子のスカートの中に手を伸ばして、紫色のレースのパンティーの上から、クレパスの食い込み辺りを指でまさぐっていた。 『…どうして、女は嘘がうまいの?』 『女は、複雑なのよ。男より、業が深い生き物だから…』 周蔵は大学一年の時に知り合った。学習院大学の三年生の美智子と、2年間真面目に交際していて、フラれた経験があった。一雄はいつもまだ抱いていないのか‼と、呆れ顔で見ていた。 周蔵は一雄のように手当たり次第、女性とセックスすることは、人間に対する冒涜だという信念があった。 『お前のプラトニックラブは時代遅れさ‼』 と、耳ダコのように一雄に言われていた。 しかし、美智子が大手銀行の総務課に勤めて、半年目。目を赤くして周蔵に告白してきた。 『…もしかして、女性に裏切られたことあるの?』 『あります…』 『あたしでよかったら、聞かせてくれない』 周蔵の弱点は一旦、心を開いた相手には手ばなしで信用するところで、あった。ここが、一雄との際立った相違点であった。だから、周蔵の方が学力優秀にも拘らず。 映研の部長は一雄で副部長が周蔵であった。 46歳の悦子にしてみれば、周蔵を口説き落とすことなど、赤子の手を捻るようなものであった。 マンションの最上階から見えている流山の夜景は、小高い幾つものやまあいから、家々戸張が点在して落ち着きのある山水画のようであった。
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