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他愛のない会話。
言葉を交わす度に解けていく指が、私達の終わりが近づいていることを告げる。
小指、薬指、中指……
最後に残った人差し指が解けた時、思わず声を上げた。
「ぁ………」
「どうした?」
「ううん……なんでもない。じゃぁ……また、ね」
「おぅ。またな」
最後の挨拶を交わして、聡は走っていく。
その姿に、胸を締め付けるような苦しさを覚えた私は、気付けば口を開いていた。
「……とし………」
最初は、私自身さえも聞こえない声。
「……聡……っ!」
今度は、少し離れてる今なら、注意すれば聞こえるような。
3度目は、思いっ切り息を吸い込んで、
「聡いいぃぃぃーーーーーーっ!!!!!!」
辺り一体にこだまするような、すごい音量。
それには、流石の聡も振り返った。
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