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何度目かの喧嘩。
いつもならそれだけだった。
しかし、彼は私に背中を向けて歩き出す。
交わす言葉もないまま。
揺れる心の中で、私は子供の様に叫んだ。
――ねぇ、行かないでよ……
心の中で、叫び続けた。
それから私も、彼に背を向けて歩き出す。
涙が落ちる前に、出来るだけ遠くへ。
幸せ過ぎるのは嫌いだと、自分の心に嘘をついた。
嘘をついて、強がって、理想の未来を手放した。
私の願いは、私の嘘で、強がりで、取り戻すことが出来なくなった。
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