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薄暗い店内に少しホッとした。
おしゃれな掘りごたつの個室に案内され、由宇と向かい合わせで座る。
「とりあえず、飲み物頼もうか」
「はい、私は……レモンサワーで」
「じゃ俺も同じの」
実は酒は余り強くない。
でもこの予想外の展開に対応するにはと思い頼んだ。
会ったばかりの二人で乾杯し、改めて挨拶。
由宇は車で三十分程の工場で事務の仕事をしている。母親とはよく喧嘩もするらしいが、仲も良いと。
お母さんは、今日のような事は滅多に無いと、余程僕の事を気に入ったからだと言ってくれた。
こんな風に言ってくれてるのに、面倒と思ってしまった自分が少し恥ずかしくなった。
僕と誕生日が一日違いと言う事が分かり、星座占いの話や、血液型の事。
東京の事を質問してきたり。
気がつけば、笑いながら会話も弾んでいた。
お母さん程の口調ではなかったが、由宇もよくしゃべった。
(やっぱり親子だな)
と思いながらも、心地よくなってきている僕がいた。
僕が子供の話をすると写真を見たいというので見せた。
「いいなぁ、私も早く結婚して子供欲しいな」
「由宇ちゃんは彼氏いるの?」
「はい……二年付き合ってるんだけど……」
由宇の表情が曇った。
「どうしたの?何かあるの?」
「涌井さん、聞いてもらってもいいですか……」
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