序章

5/10
前へ
/16ページ
次へ
この静寂に満ちた夜の挟間に佇む、自らもまた闇に溶けてしまいそうな物静かな男。 彼はふと黒炭のような瞳を意味ありげに細めると、すっと右手を剣の柄にかけた。 周囲には、生物の気配はおろか物音ひとつない。 その中で男は目を閉じ、そっと静寂に耳を傾ける。 すると突然、男は背後に向かって手にした長刀を素早く一閃した。 刹那に響く、空を切る乾いた音。 目にも留まらぬ速さで振るわれた太刀に巻き込まれた何かが、ギャッと短い悲鳴を上げる。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加