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夕闇の中に、月の光が差し込む。
夜にも、関わらずほのかに明るい。
その理由は、一目で分かる。
木々が…山が、燃えているからだ。
「………れ!」
「……をつけろ!」
「………ダメだ!強すぎる!!」
岩は砕け、森は焼け、地面がえぐれている。
大勢の、武器を持った人間達には目もくれず、赤く大きな影が低く唸りながら辺りを徘徊している。
一人が叫んだ。
「止めろ!行かせるなっ。この先には、村が・・・。」
「うらぁぁぁ!」
1人の男が、大きな剣を構え影に切りかかる。しかし、まるで岩に当たったかの様な鈍い音を立てて、剣は弾かれてしまった。
「んなっ…………」
影の鋭い眼光が男を捕らえる。影は尾を振り回し男を突き飛ばした。
「ぐわぁっ!」
男は、まるでゴムボールの様に、吹き飛ばされ近くの岩に、叩きつけられた。
「いいか!あの4人が来るまで、持ち堪えろ!」
「どりゃあ!」
「ガハッ!」
幾人もの人間が立ち向かう。
が、誰一人としてまともに近づく事もままならない。
その時、何処からか1発の弾丸が飛んで来た。
弾丸は、その影に当たり、影はうめき声をあげた。
「あれは!……例の4人だ!!間に合った。」
ひときわ大きな岩の上に4つの人影がある。
その中の1人が、小さな剣を構え、影に向かって飛びかかった。剣が影の左目に突き刺さる。
『グアァァァァァァァ!』
影は倒れ、そこから広がる砂煙と共に、周りからどよめきと歓声が上がった。
男はゆっくり剣をしまうと、後ろを向いた。
………と、その時だった。
影がゆっくりと首をもたげ、そのズラリと並んだ鋭い牙の向こうから、火炎の玉を吐きだしたのだ!
男は避ける事も出来ず、その身に炎を纏いながら地に倒れ伏してしまった。
それは、一瞬の出来事だった。
「そ、そんな………まさか……………。」
それは、誰もが予想していなかった瞬間だったに違いない。
目の前が、暗くなってゆく……………―――
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