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上を見上げれば、桃の花の後ろに広がる広大な青
美しいまでの広い空…
今日でこの景色とサヨナラだと思うとなんだか寂しさを覚える…
「私なんかほっていて戻れば?」
「んー?別にいいよ。退屈なだけだし」
特に会話はない。交わしたのだってコレだけだった
コンクリートの冷たい壁に背を預け、二人で桃の花を眺めていただけ…
カノンの音楽が止まれば体育館から沢山の卒業生が出てきて、流石に戻らなければと感じた
彼女がコンクリートから離れると「ん?もう行くか?」などと訪ねてきた
彼女は彼を見据えたまま動かなくなった。彼は不思議に思い、首を傾げながら彼女を見ていると、不意に彼女の顔が目の前にあったことに気づく…
そして触れた柔らかい感触
目を見開いて彼女を見れば、彼女は小さく紅い舌をチロリと見せ微笑んだ
「…餞別」
そういって彼から離れると桃の気の前に立った
サラサラと舞い散る桃中で彼女は愛おしそうに、そして寂しそうな笑みを造った
そしてその小さな唇が動いた
「…卒業おめでとう」
桃の木と青い空の下で微笑んだ彼女が今にも消え入りそうに感じたのは何故なんだろうか…
ただ広がる青い青いそらに虚しさと寂しさを感じた…
†end†
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