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「会いたい。」とだけ言った電話。
来てくれるわけないと思った。
私なんかのためにあの人はきっと来ない・・・。
陽がすっかりと落ちて暗くなった頃、無数のヘッドライトの波から逸脱して、ゆっくりと歩道橋のふもとに車が停まった。
その車から降り立つ姿に目頭が熱くなった。
歩道橋の階段を下りる。
彼が迎えてくれた。
すれ違う車のヘッドライトの光がじんわりと滲む。
眼に溢れてくるものを必死に堪えて、彼へ精一杯の笑顔を向けた。
できることならその腕の中に飛び込んで、ぐっと強く抱き締めてほしかった。
彼は何も聞かなかった。
ただ、「送って行くよ。」とだけ言った。
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