せつない物語

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家までのわずかな時間。 話したいことがたくさんあった。 ごく普通の何の変化もない一日だったのに、全てのことを知ってほしかった。 必死で「今日ね・・・」と話し、彼は「うん、うん」と時折笑顔を見せながら彼はただ頷いていた。 留めておくことはできない、流れの速い時間。 クーラーのよく効いた車内。 彼のしっとりとした汗と、ほのかなコロンの香りが、一人で待ちながら心細かった心を癒してくれた。 話がひと段落し、私は包み込まれたような気持ちで助手席にもたれた。 頭をシートにふいに預けた時、助手席に染みついたパフュームの残り香がした。 安っぽい制汗剤の匂いとは全然違う、気持ちの良い完璧な匂い。 それは瞬時にして、まるで何かの毒のように私の胸に絡みつき不快な痺れすら感じさせた。
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