日課

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寝起きの俺は、寝癖がついたボサボサの髪を揺らしながら、吸い寄せられるよう窓際へと立った。 「栞、おはよう」 眠い目を擦り、そう言ってニコリと微笑んでみせる。 いや、【みせる】と言うよりも、自然に微笑んでいた。 俺の名は、的場 恭一。 何処にでも居る、ごく普通の男だ。 顔も並だし、身長も平均。 これと言って取り柄もない。 彼女も、かれこれ一年程居ない、寂しい一人暮らしの男。 俺は、毎朝こうして窓際に立ち、挨拶するのが日課だ。 勿論、一人暮らしなのだから部屋には誰も居ない。 返事が返って来ない事も知っている。
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