始まり

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「凄く綺麗ですねー」 「そうでしょう?うちのイチ押し物件なんですよー。 ただ、向かいのマンションのせいで日当たりは少し悪いんですけどね…。 でも、本当に少しですよ!? ほらっ、今も日差しが差し込んでますし!!」 肌寒いと言うのに、俺の目の前に居る男性は、額から滝のように流れる汗をハンカチで拭いながら、必死に部屋についての説明をしている。 男性の話しを聞きながら、ガラリとベランダに面している窓を開けた。 「け、景色は向かいのマンションしか見えないですけど! あちらの小窓からは最高の夜景が…」 「……いい景色ですね」 男性の言葉を遮り、そう自分の感想を告げる。 振り向けば、男性は目を点にさせていて、今にも 「どこが?」 と言ってしまいそうな雰囲気を醸し出していた。
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