始まり

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もう一度、向かいにある彼女のベランダを見つめ、意味もなく微笑んだ。 明日… いや、早ければ今日中にはココに住める。 彼女の後をつけた昨日の夜。 向かいに同じ程高さのあるマンションを見つけた俺は、今日の朝、早速そのマンションの管理会社に電話していた。 家賃も今住んでいるアパートとさして変わりはない。 敷金などは、今まで意味もなく貯金していたものを崩せばいい ちょうど彼女の部屋が見える、この真向かいにどうしても住みたかったのだ。 君は知らなかっただろうな。 ビデオ店の常連だった客が、わざわざ君の家の真向かいに引っ越して来た事なんて。 住み始めた日から、ベランダに向かって話し掛けていた事なんて。 君が洗濯を干す時間さえ覚えてしまっていた事なんて。 この日から、いつも君を見ていた事なんて 始まっていた事なんて 君は知らなかっただろうな。
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