あたしのベランダ

5/7
前へ
/26ページ
次へ
「トマ次郎さんはもっと水分補給しなさいな。実のつきがよくないですよ。」   と言うのも、トマ三郎のほうには青い実が5、6個なっているのだが、トマ次郎には真っ赤に熟れてもう食べ頃なのが1個なっているだけなのだ。   「でも、まぁ、夕飯にこいつは頂きますがねぇ。」   ペットボトルの水を注ぎ終わると、真っ赤なプチトマトをちょんと指でつついてそう言った。   でも、本当のところ、このプチトマトがここまで成長したのは奇跡なのだ。   ちなみに去年は冷夏だったせいもあるのか、ちっとも育たず枯れてしまった。   というのも、このベランダは確かに南向きなのだが、目の前が樹木の生い茂った急斜面の小高い山のため、日がほとんど当たらないのだ。   苔なら喜んで育つだろうに。   だから、内心はプチトマト収穫記念パーティーでもやりたいくらい大喜びなのだ。   顔がにやけているのを当人は気付いていない。  
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加