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「今日の夕飯は何にするべかなぁ…」
そうつぶやきながら万年床に戻り寝っころがると、頭の中で食材がぐるぐる回りはじめた。
自慢じゃないが、あたしは料理音痴だ。
塩と砂糖を間違えるのはもちろん、豚肉と鳥肉の区別も、チンゲンサイとほうれん草の区別もつかない。
調理する順番なんか覚えられないし、たくさんの食材を目の前にすると硬直してしまう。
今だにキャベツとレタスは同じ物だと思っている。
実は、プチトマトもそのまま放っておけばトマトになると思っていた。
バイト先のおばちゃんに指摘されるまで理解に苦しんでいたくらいだ。
そんなあたしにとってプチトマトは、調理する必要がないから特別に好きなのだが、まさかそれだけで腹が満たされるわけではないので、自ずと毎日が戦いになるのである。
そして、今まさにあたしは頭の中で食材との戦乱を繰り広げているのだ。
「…このぉ、ニンジンめが…んが(お前)はどこまでが皮なのやぁ…」
ぶつぶつそんなことを言っていると、食材は睡魔という最終攻撃を仕掛けてきた。
こうなるともう為す術もなく、敗戦。
あっけなく夢の中である。
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