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今日もいつものと同じ朝が来た。
ただ違うのは今日が姉さんの命日という事だ。
今日は別に早く起きなくても良いのに
いつもの時間に起きてしまう。
俺は制服には着替えず部屋着のまま1階に下りていった。
「おはよう、お袋」
お袋は朝飯の仕度をしていた。
「あら、タカフミ、おはよう。
部屋着のままの所をみると
今年も学校・・・休むの?」
お袋はそう言って俺に朝ごはんを運んできてくれた。
「別に良いだろ?一日ぐらいさ。
なぁ?親父?学校休んで良いだろ?」
親父は新聞を読みながら軽く咳をしてうなずいた。
「ほら、親父も良いって言ってるじゃないか」
「別に、お母さんはダメだとは言ってないでしょ。」
そう言ってお袋は自分の分と親父の分の朝食を持ってきた。
「ほら、お父さん、ご飯ですよ。」
お袋はそう言って親父を呼んだ。
親父は新聞をテーブルに置き
席についた。
「いただきます。」
久しぶりに家族そろっての朝食だった。
いつもと違っていたのは、3人分の朝食が準備されていたのではなく
4人分の朝食が準備されていた事である。
毎年お袋はこの日になると4人分の朝食を作る。
その事は俺も親父も触れない事にしている。
何年か前に親父にその事を聞いた事があった。
「クミがあの世から1年に1回だけ来るんだから
家族そろって朝ごはんぐらいは食べたいそうだ。」
お袋は親父にそう言ったらしい。
俺は忘れていた事を思い出した。
「お袋、そういや、今日ユキ姉も仕事の帰りに来るってさ。」
「あら?そうなの?そういや、ユキちゃん最近顔だしてないわね」
「まぁな。お袋がユキ姉を姉さんと間違えて呼んだ時があったろ?」
「その時に『あまり来ないほうが良いかしら』って言ってたよ」
「そう、悪い事したわね。」
「まぁ今年は来てくれるって言うんだから良いじゃない。」
「そうね、何か出前でも取ろうかしら?」
「だから、それがユキ姉にとって来辛いんだよ。なぁ親父?」
「・・・そうだな。」
「なぁ?お袋、親父もそう言ってるじゃないか。」
「そう?でも何かご飯準備しないと」
「だから、ユキ姉も結婚してゴウタ君って
子どもも居るんだから、夕飯までは良いよ。」
そういう会話をしながら俺は朝食を食べ終わった。
「んじゃ、着替えてくるわ。」
俺は自分の部屋にあがり、喪服に着替えた。
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