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「おう、なぁお袋、タオルどこだ?」
俺はお袋が持ってきた風呂敷の中を探した。
「底にあるわよ。」
お袋が言うように他のお供え物の
クッション代わりに下に敷いていた
俺は墓石を磨き始めた。
墓石を磨き終え始めた時に懐かしい香りがした。
姉さんのタバコの匂いだ。
その匂いはいつもの親父と違っていた。
「親父・・・タバコ・・・」
俺は親父に聞いた。
「・・・良いだろ。」
親父はあまり多くを語らない。
「お父さんね、クミの命日だけは
クミが吸ってたタバコに変えてるのよ
クミがあの世でも吸えるようにですって。」
今まで気付かなかった。
親父はいつも「マイルドセブンエキストラライト」だった。
今日は「マルボロメンソールライト」だ。
姉さんはいつもドライブの時いつもタバコを吸っていた。
俺は咥えタバコして微笑む姉さんの顔が好きだった。
「・・・ほら。タカフミ」
親父が俺にタバコを渡してきた。
「はぁ?俺まだ高校生だぞ!」
「そうよ、お父さん、何してるの?」
お袋も言った
「・・・クミの命日ぐらい良いだろ。」
「そういう問題じゃねーだろ!」
「・・・そう言うなよ。ほら。」
俺は親父から1本受け取った。
お袋は少しあきれてる。
そして俺は親父にタバコの吸い方を教えてもらった。
親父は俺のタバコに火をつけてくれた。
ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ・・・
案の定むせた。
「・・・私が死んだら代わりにお前がやってくれ」
「はぁ?」
親父は俺にだけそう言った。
俺は意味がわからなかった
わけもわからず返事をしてしまった。
俺は親父と一緒にタバコを咥えながら
姉さんの眠る墓石に手を合わせた
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