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俺が気付いた時には姉さんは道端に倒れていた。
倒れていたどころではない。
体中から血を流していた。
俺は何が起こったかわからなかった。
そうしていると周りに人が集まり始めた。
その中で「救急車!」とか「事故だ!」とか聞こえた
その時俺は始めて自分の置かれた状況がわかった。
信号の変わり際に飛び出した俺は姉さんの近くまで行った時に
信号無視で突っ込んでくる車にはねられそうになった
その瞬間姉さんが飛び出して俺をかばって車にはねられたのだ。
「お姉ちゃん、お姉ちゃん」と泣き叫ぶだけの俺に
姉さんはよって来て
「タカちゃん、怪我はない?」
と言ってきた、自分が怪我だらけなのに俺の心配をしてた。
「姉ちゃん!ごめんよ、ごめんよ、姉ちゃん、姉ちゃん!」
「良いのよ、タカちゃんが無事ならね。」
だんだん姉さんの声に力がなくなっていくのがわかった。
「ねぇ?タカちゃん?」
「何?俺なら無事だからさ。」
「ううん、違うの、今から聞く事を忘れないで欲しいの。」
「何?俺馬鹿だからすぐ忘れちゃうよ。だからまた話してよ。」
俺はこれが姉さんの最後の言葉だと悟った。
でもそれを認めたくなかった。
それでも姉さんは話を続けた
「タカちゃん、タカちゃんのね、お母さんはお母さんじゃないのよ。」
俺はいきなりの言葉にびっくりした
それでも姉さんは話を続けた
「タカちゃんのお母さんはね、お姉ちゃんなの。」
意味がわからなかった。
確かに姉さんがお母さんだったら良いなと思った事はあった
でも、自分の母親はお袋だと信じてやまなかった。
「タカちゃんはね、お姉ちゃんが14の時に産んだ子なの
まだお姉ちゃん若かったから
お父さん達が自分の子として育てたの
本当は『お姉ちゃん』じゃなくて『お母さん』として
タカちゃんと接したかった・・・
ごめんね、タカちゃん。変な『お母さん』で」
「何言ってんの?姉ちゃん、嘘だろ?」
「ううん、ごめんね、タカちゃん。」
俺はその言葉でそれが本当の事だとわかった
その瞬間から俺は姉さんを母さんと呼んでいた。
そのまま母さんは俺の横で息を引き取った。
「そう呼んでくれてありがとう。タカちゃん」
それが母さんの最後の言葉だった。
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