一章「真実」

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人間は嫌な思い出は自分の都合の良いように改ざんするという 多分俺もそうなのであろうと思っていた。 俺は自分が未だに姉さんの死を受け入れてない事を知っていた。 それではダメだと思っていた。 でも、それに立ち向かう勇気が俺にはなかった。 「あなたのお父さんは、クミと別れた後、留学したの。」 「はぁ?」 「正確には留学が決まってたんだけどクミが居るから断ろうとしたのよ。 クミがそれを知って、別れを切り出したのよ。」 「うん、で?」 「あなたのお父さんが留学して2ヶ月したぐらいかな?  クミは妊娠してる事を知ったの。」 「その時、親父達はどうしたんだ?」 「ものすごく、反対なさったわ。でもクミは頑固だから」 「結局親父達が折れたのか?」 「そうね、結果はそういう形になるわね。」 「姉さんはその人と連絡を取らなかったの?」 「取ろうとしたわ、でもわからなかった。」 「でも、さっきユキ姉は生きてるって」 「うん、クミが亡くなってしばらくして同窓会があったのよ。」 「その時に俺の父親も来てたのか?」 「うん。その時にクミが亡くなった事を伝えたわ。」 「じゃ、俺の事は?」 「知らない・・・ごめんね、タカフミ。」
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