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――ピチチッ…パタパタ…
「む……?」
目が覚めたのは陽が昇り始め、小鳥がさえずるような時間だった。
まだ二人は寝袋に納まっている。きっともうすぐ目覚めるだろう。
(あれ…僕昨日……)
昨日は確かにカイと話していたはずなのだけど。今の僕はしっかりと寝袋に納まっていた。
(あ。歌ってる途中で寝ちゃったんだ…)
「……」
あまりにもまぬけな自分にちょっとだけげんなりしつつも僕は朝日を浴びに外に出た。
「ん~…!いい朝だなぁ」
早朝の少し冷たい清らかな風にあたり頭もすっきりしたところで、僕はなんとなく昨日のカイのことを想った。
(カイはたぶん、まだ、恐いんだ。……キアラさんに会うのが)
それはそうだと思う。あんな、拷問まがいの修業なんて絶対に嫌だ。考えるだけで恐ろしい。
カイはそれに耐えて耐えて。きっと助けを呼んでた。口にはしなくても、心の中でずっと。
「カイ……」
ぽつりと名を呼んですぐに頭を振った。
(ダメだ!!僕が落ち込んでる場合じゃないよ)
そうだ。僕はカイの仲間なんだから「これから」のことを一緒に考えていけばいい。
少しでも、カイのなかに巣食っている恐怖や苦しみを取りのぞいてあげられるように。
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