悲しい決意

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「…おれは、泳ぎたいんだ。アメリカで、力をつけたい。」 先輩は、静かに話し出した。 「…泳ぎたい?力をつけたい…?そんなの、日本でもできるでしょう?アメリカに行く必要なんか、ないじゃないですか。」 俺は、振り返り答えた。 先輩は、俯いている。 「顧問に紹介されたんだ…。アメリカに良いコーチがいるって。…おれも、最初は迷った。けど…」 「…けど、何です?」 俺は、責める気持ちで返した。 「おれ、自分がどこまでイケるか試してみたいんだよ。」 「…そん、なの…外国に行く理由になんか、ならないですよ…。そもそも、どうしてもっと早く、俺に教えてくれなかったんですか…?どうして、決める前に相談してくれなかったんですか?!」 生徒が行き交う渡り廊下で、俺は声を荒げた。 皆、振り向く。 「それは…ごめん…」 そんな… そんな答えを求めているワケじゃない… 謝ってほしいワケじゃない… ただ… 俺はただ、離れてほしくない。 そばにいてほしいだけだ…
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