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春花の担任が家に来た。
「………えと、こんにちは。佐倉さんの担任の青木です。お父様………ですか?」
「………ええ、っと。はい。まぁ。」
沈黙。
居間から聞こえるファイナルファンタジーのBGM。
「あのっ、あのですね、佐倉さんが二日前から学校に来てないんで、その……」
はにかみ笑顔。
「どうしてるかな、と。」
…知らんがな。
そういえば最近見ていない。非番の日には姿くらい見たもんだが。
「あー…、ウチの、行ってませんか?」
「ええ。休んでるんです。連絡も無くて…自宅は出られてますか?」
「仕事終わったら帰りが9時まわるんで確認してないですが、家にはいませんね。多分。靴無いし。」
「夕方には戻ってこられてるんですかね?」
「いや、それもよくわかんないっすね。……ふぁぁ。あぁ、失礼。寝てないもんで。ほれ、あれ。ファイナルファンタジーⅤ。今ハマっちゃってて。あぁ、まぁ、玄関先で話すのもなんなんで、どうぞ。」
躊躇する青木先生を促してリビングのソファに座らせ茶を探すが、見当たらないのでペットボトルのお茶をレンジで温めて出す。
「汚いとこですんませんね。えーとね、うーん…。春花が帰ってくる頃は大抵私が寝付いてるんですよ。オフの時は私が外に出てますし。だから、まぁ、春花とは中々顔を合わせんのです。」
「え!じゃあ、帰ってるかどうかもわからないんですか!?」
目を丸くして声を荒げる先生。いや、ちょっと待てよおいおい。
「いやぁ、帰ってるでしょ。春花はそこまで馬鹿じゃないよ。」
青木先生は徐々に表情を曇らせ小さくため息を吐いた。
「お父さん」
「はい。」
「ご自分が中学生の時のことを覚えてらっしゃいますか?」
「あぁ、なんとなくだけど。」
煙草代なくって金持ちの別所君にカンパお願いしてました。
「思い出して欲しいんですが、中学生の頃は、みんな夜遊びしたり非行に走りたいという衝動があるんです。もちろん学校でも出来る限りフォローいたします。ですが、それを一番抑止出来るのは家族の方の対応なんですよ。」
「…はぁ。」
「…だから、家庭でも、ちゃんと娘さんを見てあげてください。今ならまだ成績はいいですから。非行も止めて、真面目な生徒に戻れますよ。」
うーん。
眠いのに…。
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