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「いや、なんか、面白そうだし。先生とも白黒きっちりついてからじゃないと話しにくいからさ。ま、一回何してるか見てから決めましょうよ。明日からの土日、暇?」
「いや、予定は無いですが…いいんでしょうか。そんなプライバシー無視するようなことしてしまって……。」
「あぁ、いいよ。俺は親の義務。先生は職務の遂行。致し方無いべ。帰ってこないほうが悪い!!な、決定。まぁ、帰りに飯でも奢るからさ。そこ、純米大吟醸があるんだ。一ノ蔵の。」
「じ、純米大吟醸……。いやいや、いや、お食事は置いといてですね…。」
暫く先生は俯いて考えている。
「…そういうことなら、仕方ないですよね。お供します。」
決まり。そうと決まればひとまず今日のところは情報集めだ。
まずは玄関の自転車を見る。無い。数日離れるとなると駅に停めっぱなしはしないだろう。
俺は事務の子に出勤しない旨の連絡を入れておいて、先生を部屋の外で待たせて春花の部屋に入る。適当に散らかった室内で物を動かさないように慎重に物色。手帳やメモの類は残されていない。
「先生、火曜は春花は学校に行ってるんだよねー?」
「はいー。特に遅刻早退はありませんでしたー。」
「と、なると…」
燃えるゴミの日は火曜。俺はクズ箱を覗く。ゴミは火曜日に一旦まとめて捨てたらしく殆ど無い。残ってるのは美容室とカラオケのチラシと近所のスーパーのレシート。カラオケ屋は新宿で美容室は阿佐ヶ谷にあるみたいだ。
…阿佐ヶ谷?あんな場所に何しに行ってんだ?
それから、昨日電話した時の音を思い返す。静かだったな。
「静かで夜通し滞在できる場所ってなんでしょう?」
「いや、そういうのはどこにでもあるだろうけど。昨日は風が強かったから外では無いかな。」
昨日の電話を思い返す。確かテレビの音がしていた。滞在しているのはテレビのある場所。春花が家でテレビをつけることはあまり無いから、漫喫でわざわざつけたりはしないだろう。ラブホとかかも知れんがラブホなら宿泊には早い時間だしガキは宿泊時間まで待ってチェックインする筈だ。それに、そんなところで電話できる程図太い神経してない…と思う。多分。
レシートの購入履歴は火曜。学校に行った日の夜だ。ノート\426-、消しゴム\105-。ん?あれ?まぁ、いいか。がり勉め。たまには酒でも買ってこい、クソガキ。
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