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「先生。こっから自転車で阿佐ヶ谷って行けるもんかね?」
「意外と近いですよ。20分くらいですか。」
「KYマートの前とか通るかな?」
「うーん。場所にもよるけど、ここからだと大体通り道になるかなぁ…?」
オゲ。
阿佐ヶ谷行ってみるか。
翌日、先生と合流し阿佐ヶ谷でチラシの美容室に行き、チラシを配っていた日時と場所を確認。水曜に配っていたらしく、その時に配った場所は駅の南側。
チャリに乗ってチラシは受け取らないだろう。駅から徒歩圏内にいて、どこかに駐輪しているはずだ。
そこからは手掛かりは無いので、南側を中心に街中やマンションの駐輪場を地図を片手につぶして歩く。
「何色の自転車ですか?」
「グリーンのママチャリであります、青木隊員!」
「…あの、お父さん。」
「なんだい、先生。」
「……楽しんでません?」
「何を今更。楽しくなきゃこんなことできませんよ。」
「はぁ…………。失礼を承知で言わせてもらいますが、貴男に親の資格はありません。もっと思いやりを持ってください!」
「うーん。そう言われると辛いな…。先生は家族と一緒に住んでます?独身?」
「私は今は単身者です。熊本に両親が。」
「そりゃ、さっさとガキでも作ったほうがいい。はは。
先生の方法論は多分正しい。それも正解だ。でも、血が繋がってて家族だからって、俺はそんな風にするのは不自然な気がするんだ。脳ミソ使って判断するくらい今の春花でもできてるよ。見てるつもり。わりとね、傍目よりちゃんと、親子なんだと思ってます。先生。」
先生は唇を咬んで黙る。下を向いて、目を見開いて頬を紅潮させて。
くりんくりんの睫毛。
「先生、恋人は?」
「え?いや、今いませんけど。」
「あ、そうなんだ。勿体ないね、可愛いのに。」
「な、何の冗談ですか、やめてください。」
「あれ、照れてます?可愛いな、先生。夜はどんなふうになるのかな。楽しみだ。ふふ。」
「ちょっちょ、何考えてるんですか!?そんなセクハラ、ちょっ、」
「…いや、飯の時間の話なんすけど。」
「…………言い方がやらしいです。」
「聞き方がやらしいんですよ。」
「……弁解の為に言わせてもらいますと!!」
「あ、あのチャリだ。」
春花の自転車発見。
ボロい二階建のアパート。
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