運命の扉

3/8
213人が本棚に入れています
本棚に追加
/76ページ
僕の名前は、鰐淵龍馬(わにぶちりょうま)。奈良県在住のごく普通の、ごく平凡なサラリーマン。 名前の画数が多いのが、自慢で難点だ。 テレビのスイッチを入れ、パンを頬張りながら、コーヒーを喉(のど)に流し込む。 いつもと変わらぬ朝だ。 テレビからは、事件のニュースやホットな話題を伝える声が流れている。 特に変わったことは、何も無かった。 ただ違っていたのは、今日は彼女に別れ話を切り出そうと、心に決めていたことだった。 彼女とは、高校2年の夏から12年間つき合った。 ネクタイを絞め、鞄と携帯と鍵を手に、階段を駆け降りる。 愛車にキーを差し込み、アクセルを踏み込んで、ハンドルを切る。 アスファルトの感触、エンジン音と車体の振動が、なんとも心地いい。
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!