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「暑いぃぃ……」
溶けてしまいそうだ。
俺は部活帰り、駅のホームで唸った。
今は残暑厳しい九月中旬。
野球をした後はまた格段と暑い。
学校から徒歩十分のこの駅まで歩くのですら、シャツを汗まみれにさせるには十分だった。
「今年の残暑はきつすぎるなぁ、快人」
と、俺の隣で涼しそうに言うのは同じ野球部の宇川将(うかわしょう)。
こいつは俺と同い年だが俺より少ーし野球が上手く、一年生ながら先輩や監督にも一目置かれている。
鞄から下敷を取り出して涼んでいると、アナウンスが流れ、すぐに電車が来た。
「んー、絶妙な涼しさ」
将が座席を探しながら言う。
電車の中は適温だ。
人は少なく、ゆったりと座席に座れた。
「生き返るぅー」
将が呟く。
死んでないのに生き返るとは滑稽だな。
俺は心の中で不適な笑みを浮かべた。
「んじゃな」
将が降りる駅の二つ前の駅が、普段俺の降りている駅だ。
俺は荷物を持って将に手を上げる。
「おう、じゃあな」
将も軽く手を上げた。
外は夏から初秋にかけての天敵太陽がやっと姿を隠す頃だった。
しかし、まだまだ暑さは健在していた。
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