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「あ」
駅の階段を降りたところで気付いた。
今日は確か俺が集めている探偵ものの漫画の発売日だ。
駅からは自転車で家まで帰っている。
自転車置き場には向かわず、駅前の本屋に足を向けた。
「いらっしゃいませー」
自動ドアが開くとともに、店員の声が耳に入る。
俺は真っ直ぐ少年コミックの場所へと向かった。
「えーと……」
指を当てて探していく。
ふと、隣の人に目がいった。
「ん?」
少年コミックの場所に、少女がいた。
場所を間違ったか?
年は俺と近そうだ。高校生にもなって、少年と少女を間違うものか。
綺麗な黒髪で、制服のような白いカッターシャツに膝ぐらいまでのスカート。
その横顔はなかなか可愛く、整った顔立ちをしている。
見た目は清楚でおとなしい普通の女子高生だ。
少女はじっと本棚の上部に置いてある本を見つめている。
おもむろに、手を伸ばした。
どう見ても、女の子が読みそうな本ではない。
格闘ものの漫画だ。
俺は少女に気付かれないように横目で見ていた。
「え?」
思わず声が漏れた。
あろうことか、少女は躊躇いもなく漫画を服の中に入れたのだ。
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