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「若、雰囲気が変わりましたね」
「?そうか」
あの日以来、絢都は変わった。弱々しく消極的だった自分が嘘のように、前向きになる。
彼女は変わった。消極的さがさらに増したのか言葉数が少なくなったのだ。
「桜上水さんとはどうですか?」
「あ…うん」
途端絢都の表情が曇る。
「…何かあったのですか?」
「何も…、ただあの日以来あまり喋らなくなったなって」
「大丈夫ですよ」
キッパリと上条は言う。
「…んなさらりと」
「彼女は今自分と戦っているんです。あと少ししたらまた元の彼女に戻りますよ」
「……?自分の何と戦っているんだ」
何もかも知っている口振りに若干ムッとしながら絢都は問う。
「自分の気持ちと、です」
「???」
爽やかに穏やかに、上条は微笑んだ。
何年立っても上条という人物が読めない。
上条の読みは大抵が当たる。しかし今回はハズレかもしれない。やはり上条も所詮はただの人間だった。
桜上水はとうとう学校に来なくなった。担任はインフルエンザに掛かった、なんて言っていたがあんなのは嘘に決まっている。
で、問い詰めた所……
「転校…」
「あぁ、なんでも突然海外の方へ行く事に決まったみたいでな」
「突然過ぎる…」
へなへなとその場にへたり込む。
「……いつ日本を離れるんだ?」
「今日だ」
「きょっ…」
「多分もう日本を出ているだろうな」
「……」
膝の上で拳をぐっと作る。
「だから…」
だからここ最近元気がなかったのか?
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