何もかも捨て

4/8
前へ
/56ページ
次へ
なんとか家に着き、絢都は真っ直ぐに自分の部屋に向かう。 「はぁ…」 大きな溜め息を吐きながらベッドに深く倒れ込む。 「はぁ…」 もう何もかもどうでもよくなってきた。 この際父の跡を継いでしまおうか… 楽しいかもしれない。 「は、はは…」 自暴自棄にも程がある。そんな事したら一生この世界から抜け出せない。 「……寝よう」 ショックな事が大きすぎて何もする気がない。 絢都は重い瞼をゆっくり下ろした… 夢を見た。桜上水が笑顔で話し掛けてくる夢だ。 何を話しているのかわからないがとても楽しい話なのは確かだ。彼女は一々表情をコロコロ変えて飽きない。 見ているだけで心穏やかになる。 もっとその笑顔を見ていたかった。 夢じゃなく現実で… 夢は願望を表すと、きいた事がある。 今見ている夢は彼女の沢山の笑顔。 まさしく願望の表れだった。 彼女が笑う。 彼女が怒る。 彼女が泣く。 彼女が困る。 彼女が照れる。 そのどれもが夢でも愛しく感じた… .
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

183人が本棚に入れています
本棚に追加