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「若、若」
「ん…」
目が覚めると上条が絢都の肩を揺すっていた。
どうやら起こしていたみたいだ。
「毛布も掛けずに寝て、風邪引きますよ」
「…どうでもいいよ」
「若?」
「もう…どうでも」
夢だという事に落胆する。これが現実…
「上条……俺、親父の跡を継いでもいいかもしんない」
「ほ、本当ですか!」
「あぁ…なんかもうどうでもよくなった。…桜上水がいなくなって俺は今じゃ萎れた花だ……何もやる気が起きない」
「あ、そうです若、桜上水さんです」
「桜上水が何?」
なんだ、にやにやして。気持ち悪い、嫌がらせか?
「桜上水さんが“来てますよ”」
「………………え?」
上条の言葉に耳を疑う。しかし本当にいたのだ、夢でもない現実に、桜上水はいた。
「あ、お久しぶりです桐生君」
「お…お久しぶり」
いつもの笑顔で彼女はそこにいた。
「突然お邪魔してすみません。それにしても桐生君のお家は広いですね。和風の家って憧れていたのでなんか羨ましいです」
「あのさ…桜上水」
「はい?」
当たり前のように日本にいる桜上水に絢都は頭を抱える。担任の話では桜上水は今日日本をたったと言った筈。それなのに何故ここにいる。
いた事は喜ばしいが、とにかく理由を聞かせて欲しかった。
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