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「桜上水……なんで日本に…」
「あ、先生からきいたんですね」
はっと口元をおさえる。
「きいた。どこまで本当か嘘かわかんねーけどな」
実際桜上水は目の前にいる。
「先生が言った事は本当ですよ。本当は今日日本を離れる筈でした」
「っ…」
「だけど私、ここに残る事にしたんです」
「え…」
きっぱりと言った桜上水に絢都は目を見開く。彼女のその目は真っ直ぐと絢都を見ていた。
「プリクラを撮った時に話した事を覚えていますか?」
「え?」
「“恋愛だけは自分の好きな人とお付き合いしたい。結婚も、決めるのは親ではなく私が決めたいんです…、私が…私を本当に愛してくれる人と、私がこの人の為なら全てを捨てられると思える人と一緒になりたいんです”て話」
「あぁ…覚えてる」
確かあの時自分も言ったんだ。
「“俺も同じだ”って言った」
「だから私、捨ててきました」
「え!」
唐突に彼女はいう。その時ふと、手に持つボストンバックに絢都は目にいった。
「私あれから考えました。私は桐生君の事をただの友達と思っているのか、そうじゃないのか」
「っ……」
「だけど気づきました。何週間も学校を休んで、会話もメールもしない事によってようやく気付けたんです……自分の本当の気持ち」
「……本当の、気持ち」
「はい!」
眩しい笑顔で大きく頷く。
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